刻印の見方 ティファニーとエルメスの刻印を、各国の法律と検査制度から読み解く
ジュエリーの裏側やクラスプには、小さな文字や記号がいくつも刻まれています。その多くは飾りではなく、各国の法律や検査制度にもとづいて打たれたものです。刻印を読めるようになると、一点のジュエリーから、素材、作られた国、作った工房、デザインが発表された年まで見えてきます。
この記事では、アメリカ、フランス、イタリアの法律や公的機関の資料、美術館の収蔵記録をもとに、ヴィンテージのティファニーとエルメスの刻印の読み方をまとめました。
■素材の刻印と、アメリカの法律
925またはSTERLINGは、純度92.5%のスターリングシルバーを示します。アメリカでは1906年の法律で、スターリングと表示できるのは925以上の銀と定められ、連邦取引委員会のガイドでも、STERLINGやSTER.と表示できるのは925以上に限られています。ティファニーは1851年に銀細工師ジョン・C・ムーアと手を組み、この基準を法律よりずっと早く採用していました。
750と18Kは純度75%の18金、585と14Kは純度58.5%の14金です。シルバーと18金を組み合わせたジュエリーでは、925と750が並んで刻まれていることもあります。
■TIFFANY & CO.の刻印が並ぶ理由
アメリカでは1961年から、925や18Kなどの品位表示を打つ場合に、登録商標か名前を並べて打つことが法律で求められています。品位表示のそばにTIFFANY & CO.の刻印があるのも、この決まりに沿ったものです。
なお、STERLINGと925は、1950年代のイタリア製のティファニーにも並んで打たれています。どちらの表記かで年代を決めることはできません。
■©と年号は、デザインの発表年
©1995のように刻まれた年号は、そのデザインが最初に発表された年を示すもので、製造年ではありません。アメリカの著作権局によると、1989年3月より前に発表された作品には著作権の表示が必要でした。©1995の刻印があるジュエリーは1995年以降に作られたものですが、同じデザインが長く作り続けられることも多いため、年号だけで製造年を決めることはできません。
PERETTIやPaloma Picassoのように、デザイナーの名前が刻まれていることもあります。ティファニーは年次報告書で、ペレッティ、パロマ・ピカソ、シュランバージェの作品はそれぞれの名前で販売され、ロイヤルティが支払われていると説明しています。
■製造国の刻印
アメリカの法律では、外国で作られた品物には、買う人に原産国が分かるよう表示することが求められています。一方、国内で作ったものには国名を表示する義務がないため、ティファニーのジュエリーにはアメリカ製を示す刻印がないものが多く見られます。
ティファニーの年次報告書によると、1990年代初めに自社で作った商品は全体の3割弱で、1993年度に仕入れた商品の約42%はアメリカ国外で作られていました。ボストン美術館が所蔵するペレッティの1970年代後半のネックレスにはSPAIN、ヴィクトリア&アルバート博物館が所蔵する1960年代のリングにはITALYの刻印があります。
デンマーク製には、銀細工師アンドレアス・ミケルセンの刻印A.MIKが入ったものがあります。ミケルセンが自身の会社で作品を手がけたのは1970年からの8年間とされ、年代を知る手がかりになります。
■イタリア製の刻印
イタリアの法律では、国内で作られたり売られたりする貴金属に、925や750などの品位とともに、製造者を示す刻印を打つことが定められています。押しつぶしたような六角形の枠の中に、共和国を表す星、県の商工会議所に登録された番号、県の略号が入るもので、番号と県から製造者や輸入者をたどることができます。
当店のダブル喜平のブレスレットのように、TIFFANY & Co.と925にITALYの刻印が並ぶイタリア製のティファニーも多く見られます。
■フランスの刻印とエルメス
フランスで作られた貴金属には、国の検査を示す刻印が打たれます。銀はミネルヴァの頭、小さな作品は蟹、金は鷲の頭です。銀の第一の基準は1972年の法改正で950から925に改められ、それ以前のフランス製のシルバーは950か800でした。925の表示があるフランス製のものは、おおむね1973年以降の作と考えられます。
ひし形の枠の刻印は、製作者がフランスの検査機関に登録したもので、名前の頭文字と固有の図柄が入ります。エルメスでは、1938年からシルバーを手がけたガエタン・ド・ペルサンのG.P、チェーン工房ジョルジュ・ランファンのGLに翼などを組み合わせた図柄、クリストフォルのCFが知られています。輸入品の責任者の刻印は楕円の枠です。
エルメスのリングでは、HERMÈSのロゴに加えて750*50のような刻印が見られます。750は18金であること、50はリングの内周が約50mmであることを示し、日本の約10号にあたります。個体ごとのシリアル番号が刻まれていることもあります。
■刻印を見るときの注意
フランスでは2001年の制度改正で、30g未満の銀製品と3g未満の金製品は国の刻印を省けるようになりました。古い時代のものには純度の刻印が入っていないこともあり、長く使われてきたヴィンテージは、刻印が擦れて読みにくくなっていたり、サイズ直しや仕上げ直しで薄くなっていたりします。
rorn.shopでは、刻印が確認できないものは検査で素材を確かめ、その結果を商品説明に記載しています。ティファニーの時代背景は、こちらの記事でまとめています。
https://rorn.shop/news/6ad0120aa70dc78d6cd33236
刻印の位置や読み方について気になる点があれば、お気軽にお問い合わせください。
